◆第1回「観たいのに観れなかった映画賞」第2位、第3位作品への記念品のお渡しをいたしました!
2023年2月にswfiが開催し、3月に投票結果を公開しました、第1回「観たいのに観れなかった映画賞」にて、数多くの女性が投票した第2位「さかなのこ」、第3位作品「こちらあみ子」プロデューサー様からのコメント、同率3位「ケイコ 目を澄ませて」プロデューサー様への記念品お渡しレポートを公開いたします!
コメントをくださった西川様、近藤様、お時間割いてくださった城内様、本当にありがとうございます。
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第2位「さかなのこ」
「さかなのこ」プロデューサー 西川朝子様より、コメントをいただきました!
この度は「観たいのに観れなかった映画賞」第2位に選出して頂き、誠にありがとうございます。家庭に仕事にと多忙を極める映画製作現場スタッフにとって、映画館へ行き映画を観ることが困難になっていることは想像に難くない、というか私自身もなかなか出来ず、映画作りに打ち込めば打ち込むほど劇場から遠のいてしまうことに、忸怩たる思いをしております。
『さかなのこ』でミー坊は好きなことをずっと好きなままでいます。才能かもしれませんが、好きなままで居させてくれる環境が大きく影響していました。
この国の映画がより一層発展してゆくためにも、現場に立つ皆で力を合わせて、ひとりひとり映画愛を充足できる生活を送れるような環境を作ってゆきたいです。(プロデューサー 西川朝子)
第3位(同率2作品)
「こちらあみ子」
「こちらあみ子」プロデューサー 近藤貴彦様より、コメントをいただきました!
この度は、第1回「観たいのに観れなかった映画賞」第3位に選んでいただき、ありがとうございます。『こちらあみ子』は、出演者のほとんどが演技経験のない子どもたちでしたので、いかに彼らが自由にいられる現場を作ることを制作側は心がけました。結果今まで商業映画では経験をしたことにない、柔軟な映画制作現場ができ、子どもたちの自由な発想に驚かされ刺激を受ける毎日でした。
そんな現場を作り出してくれたのも、各パートの女性スタッフ、広島で参加してくれたボランティアスタッフ、方言指導の方の力がすごく大きかった思います。
今映画業界は、働き方改革が始まったばかりです。労働環境、ハラスメントなど考えなくてはいけない問題が沢山あります。映画の現場に来る人はかつて映画に救われた人がほとんどです。(私の周りでは)私たちは、より良い映画を制作するため、誰もが大好きだった映画に携わっていくために性別に関わらず、より良い労働環境を作っていくことを映画に関わる全ての人が考え、改善していかなくてはならないと思います。(プロデューサー 近藤貴彦)
「ケイコ 目を澄ませて」
「僕らは現場にいる人間として『いやこれマジ面白いから観て!』と言えるいいものを作るっていうことでしかないかな、と思います。それしか出来ること、頑張れることないから、って。」
・三宅監督と自主映画時代から一緒に作品作りをしていらっしゃる城内プロデューサー、今回こちらからMME賞のご連絡をした際、なんとアカデミー賞の真っ最中だったんですよね。
「そうだったんです。笑」
・そんな状況でお電話にでて下さってありがとうございました!主演の岸井ゆきのさんがスピーチで「是非劇場で見てください」と仰っていました。そんな中で「観れなかった映画賞」で申し訳ないのですが(笑)
「いえいえ」
・この賞は、映画や映像の現場で働く女性スタッフキャストが、撮影が大変すぎて映画賞、映画際の期間すら把握していなかったり、自分のやった作品の試写にもいけない、そんな厳しい労働環境に目を向ける一つのきっかけになれば、そしてそこで働く女性たちが当事者になれる映画賞を作りたい、という思いで始めました。
swfiのこういった活動について、どうお感じになりましたか?
「皆さんが他の仕事とか、やらなきゃならない事を抱えながら活動していることには本当にすごい頭が下がるというか、敬意を払いたいなと思います。」
・ありがとうございます。
ご自身が映画制作に携わるなかで、現場の労働環境についてはどのように感じていらっしゃいますか?
「僕もやっぱり映画が好きでこの仕事を始めて、それは幸せなことだとも思っているけれど、現場に入ってしまうとほぼほぼ映画が観れないという状況もやっぱりあります。
ただ、ここ最近は僕自身の立場が変わったこともあるかもしれないけれど、制作部をやっていて日々寝られない、という生活だった頃と比べると、撮影時間だったりそういうところは皆んなそこまで無理はしなくなったな、という感覚があります。
まぁ殴る蹴るが当たり前だったとは言いませんが、そういう現場も往々にしてあったし、僕は直接の被害者にも加害者にもなってはいないけれども見聞きはしていたから、昔よりは本当にマシになったと思います。
それは意識が変わったというより『それやると問題になるんだね、ダメなんだね』っていうところからなのかもしれませんが、でも変わりつつあるし、それは悪いことじゃないと思います。
ただ僕もそうなんですけど家庭があって子供がいても現場中は保育園の送り迎えだったりとか子供の世話っていうものに関してはもう完全に妻に頼り切っている状態で…。
何を言っても言い訳になってしまうけれど、前提として『こういう仕事をしていて下手すりゃ半年地方に行っちゃうとかあり得るけど大丈夫』っていう上で結婚したんですけど、でもそれが理想なのか?と言われたら社会的にはそうじゃないだろうと思っています。
勿論自分も現場では無い時など時間に余裕がある時に出来るだけの事をしようとは思っているけど、現実的にはそう(女性側に頼りきりに)なってしまう、という…。
僕の下について下さっている女性スタッフの方もいるんですけど今後どうするか…子供を産むとか旦那さんの仕事の状況に左右されておそらく現場を離れなきゃいけないタイミングがあるのかもしれない。それはそれぞれの家庭で考えなければいけない事でもありますが、でも今の状況を率直に言うと、健全なものにはなっていないですよね。」
・少しずつ長時間労働やパワハラのようなことが減ってきているという肌感だけれど、子育てとの両立という面ではまだまだ難しいですよね。
「2023年4月から、映適(日本映画制作適正化機構 https://eiteki.org/)が始まりますが、効力を持ち得るか、というところは置いておいても、やっぱり(適正化にあたって)予算が上がらざるを得ないとなった時に、僕もプロデューサーなので、回収を考えるとどうしても今の映画の興行の状況でそれは適正なようには思えないというのがあります。
予算を倍にすれば働き方や労働環境は改善できるけれど、それには映画の興行収益が上がらないといけない。本当に難しい。いやどうしたらいいんだろうなぁ、と思います、本当に。」
・プロデューサーの立場でも、みなさんどうしたらいいのか、と思われてるということなのですね。
「観客側は1年に数本観るか観ないか、ぐらいの平均の数字しかないんですね。そこに一番の問題があると思うけれど、じゃあどうしたら観る本数を上げられるか?それもまだわからない。結局、僕らは現場にいる人間として『いやこれマジおもろいから観て!』っておすすめできるいいものを作るっていうことでしかないなという結論ではありますね、今のところ。そこが頑張れるところ。諦めない、ということでしかないですね。」
・その思いは大切ですよね。それでいうと、「面白そうだから観たかった!」と多くの女性スタッフが思った、というところでは、この映画賞の受賞はそこをクリアされているのかなと思います。
「ただ、ケイコは主演の岸井以外は監督も男性だし、僕も男性だし、メインスタッフの多くは男性、メイクや助手さんには女性もいたりしましたが、そういう意味ではジェンダーバランスを考慮したスタッフィングではなかったですし、スタッフにケイコと同じ耳が聞こえないという人を入れたわけでもなかったです。手話の指導などで聾唖の方に入っていただきはしましたが、でもじゃぁスタッフたちが全員ケイコに同一化できるか、と言ったらそれは絶対にできないし、できると思っちゃいけない、その人になるなんてありえない、でも目の前に、カメラの前にその人がいるってことだけは事実で映画ってそういうものだと思うんです。
『どう感じているかわからないけど、ここにいるんだこの人は』という。
監督も一緒だと思います。監督は自分が聞こえるんだってことをすごく意識してこの作品を撮ったと言ってるし、本当にそうだなと思います。
同一化するのではなく、違うことを自覚して想像する。
女性スタッフのことについても、僕らにはわかりえないことがある。それはやっぱり想像することでしかないと思う。どうフォローできるのか、成立させられるのか、っていうのを判断していかないといけない立場かなと僕も思っている。鈍感ではいたくないと思いますね。」
・swfiは、子供ができても女性が業界を去らなくていいように、男性も考えて欲しいし、女性もキャリアを諦めないで済むように、と思って活動しているのですが、当事者の声を上げないと伝わっていかない部分があるんですね。女性の権利が!と「戦い」をしたいわけではないのですが、ただやっぱりそこに「存在している」んですよね。子供を育てている人も育てていない人も男性でも女性でもトランスジェンダーでも悩みがあって、業界にもそういう人たちがただそこにいるんだよ、って取り上げられる方がしっくりくるので、仰っている視点はとても良いなと思います。
ちなみに監督からはどんな感想がありましたか?
「『えー?マジで?』って言ってましたね(笑)。観たいって思って貰えることが嬉しいと」
・ありがとうございます!
最後に、「ケイコ 目を澄ませて」はこのMME賞と同時期に、映キャン!さんが開催した第1回「女性記者&ライター映画賞」の作品賞も受賞されているのですが、どちらも女性が選ぶ映画賞で得票が多かった点についてはどんな感想をお持ちですか?
「率直に嬉しいです。是非とも観てくれたら、とも言いたいけど観に行けないんですよね…(苦笑)僕と監督は仕事だけで会ってるわけじゃない、友達とは違うけれどフラットに良い悪いが言える関係で、そういう人と一緒に現場を共にする人は同僚であり仲間なので、その人たちが何か嫌な思いをするのは単純に僕も嫌だな、という思いはあります。仲間たちの置かれている状況を想像すること、そして想像をすることが映画を観る楽しみだとも思うので、想像することをやめないで頑張っていきます。」
関連リンク
映キャン!第1回「女性記者&女性ライター映画賞」
https://www.youtube.com/live/k97K6Ghoaxc?feature=share